【元講師が解説】レシピ通りなのに膨らまない!パン作りで失敗する3つの原因と「理論的」解決策

👧プロのパン理論

レシピ本通りに計量して、時間通りに発酵させて、オーブンに入れたはずなのに……。 焼き上がったのは、ふんわりしたパンではなく、カチカチの岩のような塊だった。

そんな経験、ありませんか?

「私にはパン作りのセンスがないのかな…」 そう落ち込んでしまう気持ち、痛いほどよくわかります。

でも、元パン職人の講師として断言させてください。 パン作りで失敗するのは、あなたのセンスがないからではありません。 ただ、「理論」を知らなかっただけなのです。

レシピ本には「作り方」は書いてあっても、「なぜそうするのか?」という理由までは書かれていません。 この記事では、パン職人歴13年の私(Bakerゆう)が、初心者が陥りがちな「失敗の本当の原因」と、それを防ぐための「理論」をわかりやすく解説します。

これを読めば、もう「なんとなく」で作るパン作りからは卒業です!

なぜ「レシピ通り」なのに失敗するのか?

結論から言うと、「レシピの数字を信じすぎているから」です。

レシピに書いてある「一次発酵 60分」という指示。 これはあくまで、「そのレシピを作った先生の部屋(環境)」での話です。

先生のキッチンと、あなたのキッチンでは、気温も湿度も違いますよね? パン作りにおいて、「時間」はあくまで目安に過ぎません。

プロは時計を見ながらパンを作っていますが、1番は「生地の状態」を見て判断しています。 この「生地を見る目」を持たずに、タイマーだけを見て作業を進めてしまうのが、失敗の最大の原因です。

初心者が陥る「失敗原因」ベスト3

では具体的に、どこで失敗しているのでしょうか? 多くの生徒さんを見てきた経験から、特に多い3つの原因を紹介します。

原因1:温度管理の認識不足(こね上げ温度と環境)

パンが膨らむために必要なイースト菌は、「生き物」です。 私たち人間と同じで、彼らにも「活動しやすい快適な温度」があります。

失敗する人の多くは、この「温度」への意識が不足しています。重要なのは以下の2つです。

1. スタート地点の「こね上げ温度」
もし、こね上がった時点での生地温度が低すぎるとどうなるでしょうか? イーストたちは寒くて活動できず、スタートからつまずいてしまいます。生地も「冷えて固く締まった」状態になり、伸びの悪いパンになります。
逆に、生地温度が高すぎると、イーストが暴走して過発酵(発酵させすぎ)になったり、生地が「熱でダレて」ベタベタ扱いづらくなってしまいます。

以下の写真は、温度計を使って生地の温度を正確に測っている様子です。プロは必ずこうして「数字」で管理しています。

2. 育てていく「環境(室温)」
せっかく適温でこね上げても、その後の部屋が極寒だったり、真夏の灼熱だったりすれば台無しです。 使っている材料や作りたいパンによって目標温度は変わりますが、「パンを置いている場所の温度」が発酵のスピードを支配します。

  • 生地温度(内側): イーストの元気の良さを決める
  • 環境温度(外側): イーストが活動するスピードを決める

レシピに「60分」と書いてあっても、あなたの部屋が寒ければ90分かかるかもしれませんし、暑ければ40分で終わるかもしれません。

適温: 元気に活動して、美味しいガスを出す
低温: 寒くて寝てしまう(膨らまない)
高温: 暑すぎてバテてしまう(過発酵・ダレる)

もちろん、使っている材料や作りたいパン(食パンなのか、フランスパンなのか)によって、目標とすべき温度は変わります。
まずは「目標とするこね上げ温度」を決め、そこにピタリと合わせること。 そして、その後の「発酵させる環境」を整えてあげること。 この2つの温度管理(マネジメント)をするだけで、失敗の可能性はグンと下がります。そこが成功への第一歩です。

原因2:計量の雑さ(0.1gの誤差)

料理(おかず作り)なら、「塩少々」や「砂糖適量」でも美味しく作れます。 しかし、パン作りは「化学」の世界です。

「だいたい」や「目分量」で作ることは、実験で薬品の量を間違えるのと同じくらい危険です。 特に、家庭で作るような「少量の生地」では、ほんのわずかな計量の差が、生地の状態を大きく変えてしまいます。

その中でも特に重要なのが、「塩」「イースト」の計量です。

塩を入れ忘れるとパンは「爆発」する?

「塩なんて、味が薄くなるだけでしょ?」と思っていませんか? 実は、塩には味付け以外に「イーストの働きを抑制する(ブレーキをかける)」という非常に重要な役割があります。

もし塩を入れ忘れると、ブレーキの壊れた車のようにイーストが暴走します。

  • 発酵が早すぎて、生地がダレる(爆発的な膨らみ)
  • グルテンが引き締まらず、ベタベタで成形できない
  • 焼き色は白っぽく、味もボケて美味しくない

このように、たった数グラムの塩がないだけで、パンはパンとしての構造を保てなくなってしまうのです。

なぜ「0.1g単位」のスケールが必要なのか?

「家のスケールは1g単位だけど、まあいいか」と思っている方、要注意です。

例えば、粉200gでパンを作る時、イーストが3g入るとします。 もしこれが手元が狂って「4g」入ってしまったらどうなるでしょう? たった1gの差に見えますが、比率で言えば「33%も増えた」ことになります。これでは発酵スピードが全く変わってしまい、レシピ通りの時間では過発酵で失敗します。

1g単位のスケールでは、この「微量な誤差」に気づけません。 家庭でのパン作りにおいて、0.1gのズレは「誤差」ではなく「別の配合」です。

失敗したくないなら、まずは「0.1g単位で測れる微量スケール」を用意してください。
下の写真のような0.1g単位まで測れる微量スケールが必須です。


「正確な計量」は、技術がいらない一番簡単な成功法則です。

原因3:発酵の見極めミス(フィンガーテスト)

レシピに「一次発酵 60分」と書いてあるからといって、タイマーが鳴った瞬間に「はい、終了!」としていませんか? 実は、これが一番危険な失敗パターンです。

原因1でもお伝えした通り、部屋の温度によって発酵スピードは変わります。 レシピの時間はあくまで目安。正解は「生地」だけが知っています。

プロは時計を見る前に、必ず「生地の大きさ」と「弾力」を確認します。そのための最強の確認方法が「フィンガーテスト」です。

正しいフィンガーテストの判定方法

発酵した生地に、粉をつけた人差し指をズボッと刺して、抜いてみてください。 その「穴」の状態で、生地の中身がわかります。

1. 穴がすぐに塞がってくる(戻ってくる)

  • 判定:発酵不足(まだ早い)
  • 理由: 生地の弾力(反発力)がまだ強すぎます。ガスが十分に溜まっておらず、伸びる準備ができていません。
  • 対策: もう10分〜15分、時間を延長して待ちましょう。

2. 生地全体がプシューッと縮む

  • 判定:過発酵(待ちすぎ)
  • 理由: 発酵させすぎて、生地の骨格(グルテン)がガスを支えきれずに壊れてしまっています。
  • 対策: 残念ながら、生地の状態は元には戻りません。焼き上がってもパサついたり、酸っぱい匂いがする可能性があります。 ですが、諦めて捨てる必要はありません。パン作りには「1次発酵」と「2次発酵」があります。 リカバリーとして、1次発酵で過発酵になってしまった場合は、2次発酵の時間を短く(20分~30分程度)して、すぐに焼いてしまいましょう。これなら、食べられるパンに仕上げることができます。

3. 指の跡がそのまま残る

  • 判定:適正発酵(ベストタイミング!)
  • 理由: 「ガスの圧力」と「生地の伸びる力」がちょうど釣り合っている状態です。

「時間」ではなく「倍率」を見る

フィンガーテストをする前の段階として、まずは見た目の「大きさ」を見てください。

元の大きさから比べて、だいたい「2倍〜2.5倍」に膨らんでいるのが一次発酵完了の目安です。 もし60分経っても大きさが変わっていなければ、それは時間の問題ではなく、温度が低すぎる(原因1)可能性があります。

「時間」は無視してください。 「大きさが2倍になり、指の跡が残る状態」になるまで、生地を待ってあげることが成功の鍵です。

今日から変わる!失敗を防ぐ「プロの習慣」

失敗しないために、明日からできることが2つあります。

温度計を必ず使う(感覚を捨てる)

「手で触ってなんとなく温かいからOK」 という感覚は、今日で捨てましょう。

人間の感覚は、その時の自分の体温や室温によって大きく狂います。 例えば、真冬で手が冷え切っている時に「30℃の水」を触ると「温かい」と感じますが、真夏の手が熱い時に同じ水を触ると「ぬるい(冷たい)」と感じてしまうことがあります。

この「感覚のズレ」こそが、失敗の最大の原因です。

プロの職人は、毎日何千個とパンを焼いていますが、自分の手の感覚を信用していません。 信用するのは「温度計の数字」だけです。

  • 水温を測る
  • 粉の温度を測る
  • こね上がった生地の温度を測る

パン作りにおいて、温度計は「あったら便利な道具」ではありません。 「ないとスタートラインに立てない必須アイテム」です。

高いものでなくて構いません。1000円〜2000円程度のデジタル温度計(スティックタイプ)を1本用意するだけで、あなたのパン作りは劇的に成功に近づきます。

記録(メモ)を取る

「今日はなんとなく美味しく焼けた!」 「今日はなぜか膨らまなかった……」

パン作りを「なんとなく」や「なぜか」で終わらせてはいけません。 たまたま上手くいったとしても、その時の条件を覚えていなければ、次に同じパンを焼くことはできないからです。

プロのパン職人は、必ず「製造日誌(ログ)」をつけています。 家庭でパンを作る時も、以下の4つだけで良いので、ノートやスマホに記録を残す癖をつけましょう。

  1. 日付・天気
  2. 室温、湿度(部屋の温度、湿度)
  3. 水温(仕込み水の温度)
  4. こね上げ温度(完成した生地の温度)

これさえ記録しておけば、失敗した時に「犯人探し」ができます。

「前回は室温25℃で上手くいったけど、今回は室温15℃で失敗した。水温を上げ忘れたのが原因だ!」 というように、失敗の原因が数字で見えてくるようになります。

失敗したデータも、記録さえしておけば「成功のための貴重なデータ」に変わります。 あなただけの「パン作りノート」を作って、データを積み上げていきましょう。それが一番の教科書になります。

まとめ:理論を知ればパン作りは怖くない

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ここまで読んだあなたなら、もう「私にはセンスがないから…」なんて思う必要はありません。

パン作りで失敗するのには、必ず「科学的な理由」があります。

  • 温度管理: イーストという「生き物」に快適な環境を作る
  • 正確な計量: 0.1g単位で「化学反応」をコントロールする
  • 見極め: 時間ではなく「生地の声(状態)」を聞く

この3つの理論さえ押さえておけば、今日からパン作りは「イチかバチかのギャンブル」ではなく、「狙って成功させる技術」に変わります。

もし失敗してしまっても、落ち込む必要はありません。
メモを見返して「あ、今回は室温が低かったからだ」と理由がわかれば、それは失敗ではなく「貴重なデータ」です。

感覚ではなく「理論」を身につけて、私と一緒に「お店に並んでいるような美味しいパン」を目指しましょう! このブログでは、これからもレシピ本には載っていない【パン作りの裏側(理論)】をわかりやすく発信していきます。

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