強力粉でパンが変わる?「タンパク質」と「灰分」の理論とおすすめ粉3選

👧プロのパン理論

「パン作りを始めたけど、スーパーで売っている一番安い強力粉を使っています」
「レシピに『強力粉』って書いてあるから、何でも同じだと思っていました」

もしあなたがそう思っているなら、非常にもったいないです!
パン作りにおいて、小麦粉はただの材料ではありません。パンの「骨格」であり、「性格」を決める主役です。 実は、プロのパン職人は、作りたいパンに合わせて粉の「数値」を見て使い分けています。

今回は、レシピ本にはあまり書かれていない「タンパク質」「灰分(かいぶん)」という2つの理論を解説します。 これを知った上で粉を変えると、あなたの焼くパンは「お店のパン」に劇的に近づきますよ!

理論1:パンの骨格を作る「タンパク質(グルテン)」の正体

まず一つ目の重要な数値が「タンパク質含有量(%)」です。 パン作りをする人なら「グルテン」という言葉を耳にタコができるほど聞いていると思います。

ですが、ここで衝撃的な事実をお伝えします。 実は、小麦粉の中には最初から「グルテン」が入っているわけではないのです。

グルテンが生まれる「化学方程式」

小麦粉の中には、性質の違う2つのタンパク質が存在しています。これらが「水」と出会い、こねることで「物理的な力(エネルギー)」が加わって初めて、網目状の「グルテン」へと進化します。

この仕組みは、以下の計算式で覚えましょう。

【グルテニン(弾力)】 + 【グリアジン(粘着力)】 + 【水・こねる力】or【 水・時間】= グルテン

  • グルテニン(弾力): バネのような性質。「パンのコシ」や「膨らむ力」を作ります。これがないとパンはぺしゃんこになります。
  • グリアジン(粘着力): とりもちのような性質。「生地の伸び」や「つながる力」を作ります。これがないと生地がブチブチ切れてしまいます。

この2つが絡み合うことで、パンは風船のようにガスを抱え込み、大きく膨らむことができるのです。

もう一歩奥へ:タンパク質の「酵素分解」がパンを左右する

ここからは少しマニアックですが、失敗しないために非常に重要な理論です。

小麦粉やイーストには、タンパク質を分解する「酵素(プロテアーゼ)」が含まれています。 時間が経つにつれて、この酵素がグルテンの網目をチョキチョキと切っていきます(これを酵素分解と言います)。

これには「良い面」と「悪い面」があります。

  • 良い作用(適度な分解): ガチガチに強すぎるグルテンが適度に緩み、生地がしなやかに伸びるようになります。また、タンパク質が分解されることで「アミノ酸」が生まれ、パンの旨味が増します。
  • 悪い作用(過度な分解): 発酵時間が長すぎたり温度が高すぎたりすると、酵素が暴走してグルテンを切り刻んでしまいます。すると、生地がドロドロに溶けたり(ダレる)、焼いても膨らまないという失敗につながります。

「強力粉」や「最強力粉」のようにタンパク質が多い粉は、グルテンの量も多いので、多少酵素に分解されても骨格を保てます。 しかし、リスドオルなどの「準強力粉」は元々タンパク質が少ないため、酵素の影響を受けやすく、管理がシビアになります。

初心者のうちは「タンパク質が多い粉(強力粉・最強力粉)」を使ったほうが、骨格がしっかりしているため、発酵などの多少のミスをカバーしてくれるのでおすすめです。

1. 最強力粉(タンパク質:13.5%前後)

  • 特徴: マッチョで力持ち。グルテンが最強に強い。
  • 用途: 山型食パン、ホテルブレッド、具材がたくさん入った重いパン。
  • 代表銘柄: ゴールデンヨットなど
  • 効果: 初心者が使っても、びっくりするくらい背の高いフワフワのパンが焼けます。

2. 強力粉(タンパク質:12%前後)

  • 特徴: バランスの取れた優等生。
  • 用途: 菓子パン、惣菜パン、角食パンなど、パン全般。
  • 代表銘柄: カメリヤ、イーグルなど
  • 効果: いわゆる「普通のパン」を作るならこれ。扱いやすく、失敗が少ないです。

3. 準強力粉(タンパク質:11%前後)

  • 特徴: 少し力が弱い。あえてグルテンを弱くしている。
  • 用途: フランスパン(バゲット)、クロワッサン、ハードトースト。
  • 代表銘柄: リスドオルなど
  • 効果: 粘りが少ないので、歯切れが良く「サクッ」「パリッ」とした食感が出せます。

理論2:パンの性格(味)と発酵を決める「灰分(かいぶん)」

さて、ここからがさらに深いプロの視点です。 「膨らみ」だけでなく「パンの味や香り」、そして「発酵のスピード」にこだわりたい時、私たちは「灰分(かいぶん)」という数値を見ます。

灰分とは、簡単に言えば小麦の外皮や胚芽に含まれる「ミネラル分(カルシウム、鉄、マグネシウムなど)」のことです。 お米で例えるとわかりやすいでしょう。

  • 灰分が低い(真っ白な粉) = 精米された「白米」。雑味がなく、上品できれいな味。
  • 灰分が高い(茶色っぽい粉) = 糠が残った「玄米」に近い。色がくすみ、「小麦の濃い香り」と「複雑な旨味」がある。

0.01%の世界!粉による灰分量の違い

では、実際にどれくらいの量が含まれているのでしょうか? 一般的な目安は以下の通りです。

  • 特級強力粉(最高級食パン用): 0.35%前後(真っ白で雑味がない)
  • 一般的な強力粉(カメリヤなど): 0.38%前後
  • 準強力粉(フランスパン用): 0.45%以上(色がくすみ、香り強い)

たった0.1%にも満たない違いですが、これがパン作りにおいては劇的な差を生みます。 その理由は、外皮付近に含まれる「酵素」と「ミネラル」の働きにあります。

1. 「酵素」の力がパンを変える(アミラーゼとプロテアーゼ)

実は、灰分が高い(外皮に近い)粉ほど、「酵素」が多く含まれています。 この酵素たちが、生地の中で活発に仕事をします。ここが科学的に一番面白いところです。

① デンプンの分解(アミラーゼの働き)

酵素の一種「アミラーゼ」は、小麦のデンプンを分解して「糖」に変えます。

  • メリット: イーストのエサ(糖)が勝手に増えるため、発酵力が強くなり、ほんのりとした自然な甘みが生まれます。

② タンパク質の分解(プロテアーゼの働き)

もう一つの酵素「プロテアーゼ」は、タンパク質(グルテン)を分解します。

  • メリット(旨味): タンパク質が分解されると「アミノ酸」になります。これがパンの深い旨味の正体です。
  • デメリット(ダレる): 分解が進みすぎると、せっかく作ったグルテンの網目が切れてしまいます。その結果、生地がドロドロに溶けて(ダレて)扱いづらくなります。

フランスパン用の粉(リスドオルなど)を使って、「レシピ通りなのに生地がベタベタになった…」という失敗は、この「プロテアーゼの働きが強すぎたこと」が原因であることが多いのです。

2. 「ミネラル」がもたらす美味しさの相乗効果

酵素だけでなく、ミネラルそのものもパンを美味しくしてくれます。

  • イーストの「栄養ドリンク」になる: ミネラルはイースト菌の活動を助ける栄養素です。これがあるとイーストは複雑な「有機酸(乳酸など)」や「アルコール」を出し、ヨーグルトのような芳醇な香りを生み出します。
  • 焼き色と香ばしさ(メイラード反応): パンの皮のあの美味しそうな褐色。あれは糖とアミノ酸が反応して起こる「メイラード反応」ですが、ミネラルはこの反応を促進する触媒(促進剤)になります。灰分の高い粉を使うと、パリッと香ばしい焼き色がつくのはこのためです。

まとめ:どちらを選ぶ?

  • 上品な白さと扱いやすさ(失敗しにくさ)なら → 灰分の低い粉(カメリヤなど)=酵素が適度で、生地がダレにくい。
  • 扱いづらくても、濃い旨味と香りを求めるなら → 灰分の高い粉(リスドオルなど)=酵素が多く、アミノ酸(旨味)たっぷりのパンになる。

この「酵素のリスク」と「味のリターン」を理解して使い分けるのが、脱・初心者の証です。

元講師が選ぶ!初心者が最初に試すべき「王道の3選」

「理屈はわかったけど、結局どれを買えばいいの?」 そんなあなたのために、パン作りをするなら絶対に一度は使ってほしい「王道の3銘柄」をご紹介します。

これを使い分けるだけで、パン作りの腕が上がったように錯覚するはずです(笑)。

1. 【基本の優等生】カメリヤ(日清製粉)

日本のパン作りの「標準」とも言える粉です。多くのレシピ本は、このカメリヤ(または同等品)を使う前提で書かれています。

  • タイプ: 強力粉
  • おすすめ: 菓子パン、ロールパン、初めてのパン作り
  • 感想: クセがなく、扱いやすさはNo.1。まずはこの粉で練習して「基準」を知りましょう。赤いパッケージでスーパーでも売っていますが、ネットで買う業務用(1kg〜)の方が割安なことが多いです。

🔴【https://a.r10.to/hkg8VW:カメリヤ】

2. 【食パン特化】ゴールデンヨット(日本製粉)

「お店みたいなフワッフワの山型食パンが焼きたい!」 そう思うなら、迷わずこれを使ってください。「最強力粉」と呼ばれるカテゴリーの粉です。

  • タイプ: 最強力粉
  • おすすめ: 山型食パン、リッチなホテルブレッド
  • 感想: グルテンの力が凄まじいので、発酵でグングン伸びます。「私、パン作り上手くなった?」と感動すること間違いなし。ボリュームを出したい時に最強の相棒です。

🔴【https://a.r10.to/hPPZFN:ゴールデンヨット

3. 【ハード系の王様】リスドオル(日清製粉)

「フランスパンを焼きたいけど、普通の強力粉だとなんか違う…」 それは、粉が強すぎるからです。ハード系には、この「準強力粉」が必須です。

  • タイプ: 準強力粉
  • おすすめ: バゲット、カンパーニュ、ピザ生地、ハードトースト
  • 感想: 灰分が高めに設定されているので、焼いた時の「香ばしさ」が段違いです。皮(クラスト)はパリッと、中(クラム)はモチッと。ハード系を目指すなら、この粉を使わない手はありません。
    実際にお店でハード系のパンに使われています。

🔴【https://a.r10.to/hYXtfP:リスドオル】

まとめ:粉を変えることは「一番安い投資」である

たかが小麦粉、されど小麦粉。 道具を買い替えるのは数千円かかりますが、粉を数百円高いものに変えるだけで、パンのクオリティは激変します。

  • 基本を極めるなら「カメリヤ」
  • 爆発的なボリュームが欲しいなら「ゴールデンヨット」
  • お店のような香りとハードさを求めるなら「リスドオル」

まずはこの3つの中から、自分の作りたいパンに合わせて選んでみてください。 袋を開けた瞬間の香りや、焼き上がりの違いに、きっと驚くはずですよ!

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